基板はエッチングを行い銅箔のパターンを作ります。
このエッチングのパターン転写用フィルム(マスクフィルム)を作る事をアートワークと言います。

今は、PC(パーソナルコンピュータ)が安く手に入り、無償のPCB-CADで基板設計、アートワークが出来るようになりました。
昔、PCやPCB-CADが普及する前は、パターン転写用フィルムは手作業によって描いていました。
つや消しのマイラーフイルムに直接コンパスや定規を使って黒インクペンで描いていました。
これを「墨入れ」と言っていました。
アートワーク = 墨入れ
当時、製品の開発期間が1年とか1年半でしたので、基板設計や墨入れは設計者が行う事が多かった様に思います。
時間も有ったので、テスト基板の作り変えも何回となく出来ていました。
その後、アートワークは黒い粘着テープや部品パッド形状をした粘着シールを直接マイラーフイルムに貼ってマスクフィルムを作る様になりました。
この粘着テープや粘着シールは墨入れと違って回路パターンの修正が簡単に出来て便利でした。
が、完成した原版マイラーフイルムを基板屋さんに渡るまでの間に、この粘着シールが剥がれる事がありハラハラでした。www
そして、PCB-CADの登場です。
私が最初に使ったPCB-CADは、図研(ZUKEN)のCR-3000(PWS)でした。
CR-3000はUNIX系のワークステーションで、価格は1台数千万円ほどしました。
この頃から回路設計と基板設計・アートワーク作業が分業になったと思います。
先ず、回路設計者がマイラーフイルムや方眼紙に2倍~4倍の大きさで部品配置とパターンの下書きをして、それをデジタイザー(部品の位置を入力できるポインティングデバイス)を使って部品と信号ラインの位置をデジタル化してPCB-CADでアートワークを行っていました。
完成したCADデータ(Gerberデータ)は、磁気テープに落としこんで基板屋さんに送っていましたが、その後、基板の試作時間を短くするためCADデータをモデムで送っていました。
このモデムでの転送は、帰社する前に基板屋さんに電話をしてモデム回線を空けて貰いデータ転送をセットしてから帰宅です。
そして翌朝出社、データ転送が終わっている筈のモデムが止まっていて唖然。
こんな事がよく有りました。Ww
モデムも特殊な高価なモデムでしたね。
まだこの時は部品配置やパターンの下書きが出来る時間が有ったので良かったのですが、段々と設計期間が狭められて来て下書きも書けない状況になり、回路図を書いたらそれをCADオペレーターにマル投げしていた時も有りました。ww
大手電気メーカーでは、回路設計とアートワーク(PCB-CAD)は分業されています。
このへんは難しいのですが、CADオペレーターの能力と技術情報の伝達(打合せ)がポイントとなります。
それからDOS-V機が出始めてPCベースのPCB-CADが発売されるようになりました。
MY-PCB、Protel、PADS2000、K-4 CAD等で、50万~数100万で購入できるパーソナルCADの時代となりました。
そして、現在は無償のPCB-CADが色々と提供されています。
よい時代です。